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Q&A 遺 言

  

Q18 遺言能力、遺言の効力の争い方

 病院に入院している父が認知症と思われる状態になっています。先日、妹が見舞いにやってきて、父に遺言を書かせて遺言を持って帰ったようですが、父は既に正常な判断ができる状態ではないので、私はそのような遺言はみとめたくありません。父にその遺言を撤回させたいのですが、どうすればよいでしょうか。

A18

1. 意思能力(遺言能力)
 遺言を行うためには、遺言をする時において、その能力を有しなければならないとされています(民法第963条)。
 この能力は、自分の行う遺言が法律的にどのような効果を生じるかを理解する能力のことをいい、法律上「意思能力」ないし「遺言能力」とよばれています。 遺言を行う意思能力があるか否かは、遺言時における本人の具体的状態に応じて判断されます。よって、認知症の人であるから必ず意思能力が認められないというわけでありません。遺言を作成しようとする者の認知症の程度や理解力、遺言作成の動機や経緯、遺言によって生ずる法律効果の複雑性、遺言条項の複雑性等から総合的に判断して、遺言者が遺言条項及びその効果を理解できるような場合には、その遺言については意思能力があると認められます。
 設問の場合、父の認知症の程度や理解力、遺言作成の動機や経緯、遺言によって生ずる法律効果の複雑性、遺言条項の複雑性といった事情を総合的に考慮して、父が遺言作成時において遺言能力がないと判断できれば無効となります。 

2. 争い方
 遺言の効力を争う方法として、遺言無効確認訴訟という訴訟類型(形成訴訟)が認められています。遺言の有効無効は訴訟事項であるため、管轄は家庭裁判所でなく地方裁判所となります。
 訴訟では、遺言について法律上の利害関係を有する者を当事者とする必要があり、法定相続人のほかに受遺者も被告に加える必要があります。もっとも、設問のように遺言者である父が存命であるときは、遺言無効確認訴訟を提起することができないとされています。なぜならば、遺言者が存命の場合、遺言者が新たな遺言をすれば足りるからです。
 したがって、単に新たに遺言をしてもらえば足りますが、父は認知症であると疑われる状態であり死後遺言能力が争われる可能性があるので、成年後見人を選任した上で遺言をするとよいでしょう。 

                        (弁護士 田中 康道 ・ 弁護士 千崎 史晴)

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