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Q&A 遺 言

  

Q5 自営業か相続人の一人に全財産を引き継がせる遺言を書く時の問題点

 私は八百屋を経営しています。妻の死後、一緒に手伝ってくれている二男に借地の上に建っている八百屋の店舗と、八百屋に関する権利の一切を相続させてやりたいと思っています。銀行に勤めている長男には、就職時に車を買ってやったので、遺産をやる必要はないと思っています。八百屋には、店舗の改装費用として信用金庫から借り入れた500万円の借金があります。現金も1000万円くらいありますが、普段の運転資金やら何やらに必要なので、500万円の借金を一気に返すことはできません。二男に、私の財産のすべてを受け継がせる遺言を書くことはできますか。

A5

 上記の事例では、長男には遺留分がありますので、二男に父の全てを継がせる遺言を書くことは困難ですが、二男に八百屋に関する一切の権利を継がせる遺言を書くことは可能であると思われます。個人で事業を行われている方のケースですから、典型的な遺言が必要なケースです。奥様は既に亡くなっておられるので、相続人は、長男と二男の二人のようです。
 遺産の内容としては、プラスの財産として、八百屋の店舗(建物)、借地権、現金1,000万円、八百屋の経営権があります。経営権というのが難しいのですが、もし八百屋が株式会社であれば、経営者である遺言者は会社を支配できるだけの株式を持っていると思われますし、特例有限会社であっても出資金は株式となっておりますので、この株式を保有していると思われます。また、マイナスの財産として信用金庫からの借入500万円があります。このように、八百屋に関する権利といっても有体の財産として何が含まれるのかを特定してやる必要があります。このような相続財産の特定も、法律の専門家に相談するとよい事項といえるでしょう。

 次に、これらの財産全てを二男一人に相続させるときには、次の点も問題となります。
 第1に、債務を一人に引き継がせることになりますので、債務引き受けと同じく、債権者の同意が必要となると考えられます。債権者が信用金庫ですから、八百屋の営業をそっくりそのまま引き継ぐのであれば、同意をしてくれると思いますが、遺言を書くときに確認が必要な事項です。
 第2に、長男の遺留分(遺留分についてはQ3-6をご覧下さい。)を侵害しないかという問題があります。子2人が相続人のケースでは、長男の遺留分は4分の1となります。つまり、被相続人である父の財産の4分の1は、遺留分を有する長男の権利として保証されます。遺産の全部を二男に相続させる場合は、遺留分の侵害となりますので、4分の1の限度で遺留分減殺請求がなされる可能性があります(詳しくはQ3-6をご覧下さい)。
 第3に、遺留分の算定時に、長男だけに買ってやった車を特別受益として認めることができる可能性があります。車がいくらだったのかを調べる必要があるでしょう。
 これらの問題点をきちんと整理すれば、どのような遺言を書くべきかが見えてきます。

                      (弁護士 中島 圭太朗 ・ 弁護士 佐藤 勉)

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